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日本にみられるブルーベリーのウイルス病

岩手大学農学部
附属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター 渡邉 学
農学生命課程 磯貝雅道


1.日本国内で検出されたブルーベリーウイルスおよびウイルス病様症状

これまで日本では、アメリカで発生しているブルーベリー赤色輪点ウイルス(BRRV)、ブルーベリー潜在ウイルス(BBLV)の発生が確認されている。また、日本で海外未報告のブルーベリーAウイルス(BVA)およびブルーベリー小球形潜在ウイルス(BLSV)の発生を突き止めている。BVAは潜在感染性のウイルスでアメリカにおいても発生しているという情報を得ているが、BLSVは日本のみでの発生であり、感染すると果実重が減少することが明らかとなってきた。さらに、ブルーベリーモザイク病(後述)と同様の症状を示すブルーベリー樹が検出されている。


2.アメリカでのブルーベリーウイルスの研究および発生

ブルーベリーの世界の主要生産国であるアメリカではNational Clean Plant Networkという企業・州政府・大学で構成された組織があり、ブルーベリーウイルスの研究が行われている。ブルーベリー栽培の面積拡大およびウイルス診断技術の向上に伴い、現在でも新たなウイルスの発生が確認されている。その一つとして、ブルーベリーモザイク病のブルーベリー樹から新種ウイルスが発見され、モザイク病との関連について解析が進められている。これまで、BRRV、BBLV、Blueberry leaf mottle virus、Blueberry scorch virus、Blueberry shock virus、Blueberry shoestring virus、Peach rosette virus、blueberry necrotic ring blotch virus、トマト輪点ウイルス、タバコ輪点ウイルス、タバコ条斑ウイルスの発生が確認され被害を及ぼしている。


3.ブルーベリー赤色輪点ウイルス(BRRV)

BRRVに感染したブルーベリー樹では葉、新梢および果実に病徴が認められます。しかし、病徴の発生の様子は結実の有無や品種で異なります。また、樹や果実の生長にも影響がみられます。BRRVに感染したブルーベリー樹の特徴を以下に紹介します。


○葉と新梢の病徴

結実樹では果実の着色開始期前後から葉と新梢に病徴がみられるようになります(写真1)。葉では、最初に表面の先端部〜中央部に赤〜赤褐色のスポット状(斑点)(写真1)、またはリング状(輪点)(写真2)の病徴がみられます。その後、病徴は葉の表面全体に広がり、葉は赤茶けて見えるようになります(写真3)。果実の収穫が終了した頃には、多くの葉および新梢で病徴が発生します。未結実の幼木では結実樹よりも早い時期から葉および新梢に病徴が発生し始めます。BRRVと同様に葉の表面に斑点がみられるサビ病では、葉の裏面でも斑点がみられるのに対し、BRRVでは葉の裏面に病斑は認められません(写真4)。 また、品種によって病徴の発生の様子は異なり、‘ブルーレイ’および‘シエラ’では葉および新梢に病徴が激しく発生しますが(写真3および5)、‘デューク’では新梢の病徴はあまりみられません。なお、病徴は紅葉時でも確認することができます(写真6)。



写真1 BRRVの病徴が発生し始めた葉(‘シエラ’)



写真2 BRRVに感染した葉と新梢に見られる輪点
(‘ブルーレイ’)



写真3 BRRVの病徴が拡大した葉と新梢(‘シエラ’)


 
写真4 BRRVに感染した葉の表面(左)と裏面(右)(‘シエラ’)




写真5 BRRVの病徴が激しく発生した樹(‘ブルーレイ’)


写真6 BRRVに感染した葉の紅葉(‘シエラ’)


○果実の病徴
果実では、着色開始後に病徴が認められるようになります。葉や新梢と同様に斑点や輪点の病徴がみられます(写真7)。果実が成熟した時、‘シエラ’では病徴部分が完全に濃青色に着色せず、わずかに赤味が残りますが、‘デューク’では全体が完全に濃青色に着色し、もともと病徴のあった果実かどうかは全く判別がつかなくなります。



写真7 BRRVに感染した果実の病徴(‘ブルーレイ’)


○樹体生長と果実品質
BRRVに感染し病徴が多くみられる葉では光合成速度が大きく低下します。BRRVに感染した樹では果実がやや小さくなる傾向がみられますが、糖度に対する影響ははっきりしません。新梢の生長量や花芽着生に対する影響はほとんどみられません。


○防除
ウイルス病なので、薬剤による防除はできません。感染樹より挿し木用の穂木を採取しますと、その挿し木苗は必ず感染していますので、穂木を採取する際には十分注意を払う必要があります。接ぎ木でも感染します。これまで感染経路は特定できていませんが、接触感染するという情報もあります。つまり、剪定時に鋏を介して感染が拡大する可能性があるということです。これらのことから、感染樹を発見したら、すみやかに伐採・抜根し、焼却処分することが望ましいです。

寄稿者

岩手大学農学部附属寒冷フィールドサイエンス教育研究センター
助教 渡邉 学

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